「忘れられないんです。その人と一緒になりたいのです」
抑えきれない溢れる涙をハンカチでぬぐいぬぐい、
うったえるTさんの姿は悲痛なものでした。
見えない糸が引き裂かれたと感じてしまったほどです。
しかし・・話を聞いていくと、Tさんの思い込み・被害妄想。
そこまでTさんを追い詰めた原因はなんだったのでしょう。
ある男性に執着してしまった原因はなんだったのでしょう。
Tさんの、結婚生活は悲惨なものでした。
別れたくても、何をされるかと考えると離婚も切り出せない。
子供を守るため成長するまではと我慢を重ねていた内容は、
Tさんの強さを感じさせるものでした。
そんな中、仕事先の社長が優しく接してくれ、気持ちはどんどん社長にのめり込んでいったのです。
Tさんが、心のよりどころを求めてしまうのは致し方ないと思います。
そこで、優しくしてくれる社長は自分を好きに違いない、社長も私を求めてくれていると思い込んでしまったのです。
客観的に見れば「勘違いしすぎでしょう」と思われることも、
あまりにも悲惨な状態が続くと、
気持ちが現実から逃避することは珍しいことではありません。
Tさんは、後にご主人の不貞が発覚し離婚することができ、
恐怖と苦痛の結婚生活から解放されました。
そんな経過の後に、相談に来られました。
Tさんに「社長のどのようなところに惹かれたのですか?」と伺うと、
「一緒に話していると、すごく安心するんです」との答えでした。
「今、離婚して恐怖を感じていますか?」
「恐怖はないです」
「お住まいは危険がありますか?」
「・・・ありません」
「では、安心な状態ですか?」
「はい」
Tさんは、恐怖の結婚生活で自分は安全ではない、
安心が欲しいと強く願い続けていたのです。
そこで優しくしてくれた社長に安心感を見出してしまった結果、強く執着してしまったと言えます。
話す中、今の自分は安全であって安心なんだと気付けた結果、泣き濡れた顔に満面な笑顔が戻ってきました。
不思議なことに、社長へのゆがんだ執着も夢が覚めるように消えていきました。
人は何かを得られると感じると、それが愛だと思い込みます。
愛だと思えば手に入れたい気持ちが抑えきれなくなります。
手に入らなければ怒りが湧いてきます。
どんどん波動の低い感情が湧いてくるのです。
Tさんは、社長がいなくても自分は満たされていることに気付けたことで、方向転換しました。
今、自分は『安全で安心で自由』だと心の底から感じることが出来たからです。
Tさんは、新たな人生を前向きに歩き出しました。
そして、自分の経験をいかし、結婚生活で苦しんでいる人の相談にのれるほど逞しくなっています。
人生は辛いことも経験します、成長のためです。
しかし、その強さを持っているから経験することでもあります。
そして、原因を知ることで、
思っているほどたやすく乗り越えていけるものです。